准教授
根無 一信
Kazunobu NEMU
専門: 形而上学、宗教学、倫理学
1979年大阪府生まれ。京都大学総合人間学部卒、京都大学大学院人間・環境学研究科単位取得退学。日本学術振興会特別研究員DC1。人間・環境学博士。大阪教育大学、関西医科大学、近畿大学等での非常勤講師を経て現職。
詳しい経歴「例外者」になるべし。
大学に入学すると、高校までとは違って「自由」を感じることでしょう。もっとも、「自由」といってもいろいろな「自由」がありますが、私がいま強調したい「自由」とは、「権威からの自由」です。大学は学問をする所です。学問とは物事を徹底的に考え抜く作業を中心にして営まれるものです。徹底的な考察には「懐疑」や「批判」が欠かせません。これはつまり、学問は世の中の常識や権威的なものを疑って、おかしいと判断すれば批判する、ということです。ですので、学問をする以上、みなさんは常識や権威を妄信してはいけません。辞書や先生だって疑い得ます。しかし、常識を疑う人は、常識に従うその他大勢にとっては「例外者」でしょう。ですので、真に学問する人は「例外者」であるでしょう。「例外者」になることを決して恐れてはいけません。その他大勢から言われる「あの子かわってる」という言葉はむしろ最大の賛辞です。ですので、学びに学んで下さい。自由の精神で大いに学んで下さい。そして権威を疑う実力を身につけた「例外者」になって下さい。
専門分野
私が専門に研究しているのは哲学です。「私とは何か」「自由とは何か」「存在とは何か」といった根本的な問いを問うのが哲学です。
私が常に関心を持ち続けているテーマ(の一部)は、「なぜこの世界に悪があるのか」「みんなちがってみんないいで本当にいいのか?」といったものです。
学科で教えていること
哲学を専門にしている私は、扱うテーマについてその本質を考察するような授業を基本的に行なっています。「自己再構築論」では例えば「自由とは何か」について考察しています。また、ヨーロッパ研究Aでは「ヨーロッパとは何か」と問い、ヒストリー・オブ・レリジョンでは「宗教とは何か」と問います。こういう問いを問うことで、それまで全く見えていなかったものが見えてくるでしょう。
担当科目
Academic Skills I・II、基礎ゼミナールI・II、専門ゼミナールI・II・III・IV、自己再構築論、ヨーロッパ研究A(基礎)、ヒストリー・オブ・レリジョン、ヨーロッパ研究C(文化)、フォークロア・エスノロジー研究、ガバナンス演習A(善悪と倫理)、リクリエーション演習C(自己再構築論)
ゼミのテーマ
ゼミに入る前に、自分のお気に入りの哲学者を見つけてもらいます。そのために、根無ゼミを志望する学生にはゼミに入る前から多くの本を読んでもらいます。
基礎ゼミテーマ
「『みんなちがってみんないい』でいいのか?」という問いを一つのきっかけにして、この問いに関わる哲学的な諸問題を考察することで、常識を徹底的に疑う哲学の営みに触れてもらいます。また、哲学書もしっかり読みます。例えば、デカルト『省察』やライプニッツ『モナドロジー』を読み、真理を探究する本物の哲学者の議論に触れてもらいます。
専門ゼミテーマ
「ありのままのあなたでいいんだよ」や「私はありのままに生きていきたい」という表現をしばしば耳にしますが、「ありのまま」という態度をよしとするかどうかをめぐって、哲学者たちは少なくとも2500年前から議論してきました。専門ゼミでも基礎ゼミに続いて哲学書をしっかり読みますが、「ありのまま」をめぐる問題に引き付ける仕方で、老子『老子(道徳経)』や唯円『歎異抄』など、東洋の哲学者たちの深い洞察を学びます。
過去の学生のゼミ論文
- 遺伝子操作によって子どもの自己決定権は奪われるのか
- AIの存在と人間性
- 幸福論批判
主な著書
- 『ネム船長の哲学航海記① ソクラテスからの質問』(2022年、名古屋外国語大学出版会)
- 『ライプニッツの創世記―自発と依存の形而上学』(2017年、慶應義塾大学出版会)
- 『ライプニッツ著作集、第二期、第一巻』(共著、2015年、工作舎)
- 『哲学するのになぜ哲学史を学ぶのか』(共著、2012年、京都大学学術出版会)
最も影響を受けた人
私は冒険家の植村直己に最も大きな影響を受けています。高校1年生の時に植村直己の『極北に駆けて』を読み、それまでの世界観・人生観が完全に覆されて、常識を疑うことを学びました。植村直己に出会っていなかったら今の私はないでしょう。より詳しくは『ネム船長の哲学航海記①』の「読書ガイド」と、『Artes MUNDI』vol. 6 の「私の「世界一」の映画」に書いてあります。