スーパーアドバンストPBLプログラム『PBL Literacy』
常に挑戦する「オンサイト」型の国際教養教育
ジャーナリストとのコラボレーションによる「リテラシー」能力の開発

発信力を高める文章講座

2.学生の作品


現代国際学部 国際教養学科 谷出知恵里

■オーストラリアでの失敗から得た教訓 【第11稿】

大学一年生の時、オーストラリアに一カ月の語学研修で来て一週間が経った時のことだ。大学からホームステイ先までバスに乗って帰っていたとき、日本で使っていたアイフォンを触りながら写真を見かえしていた。はっと気づくと、降りるバス停だった。慌ててアイフォンをパーカーのポケットにしまい込み、飛び降りた。ぎりぎり間に合ったことにホッとしつつ、ポケットに手を入れた時アイフォンがないことに気づいた。

 

バスを追いかけようと後ろを見た時には、既に発車していて間に合わないと思った。「うわ、どうしよう」頭が真っ白になった。携帯には高校の時からの思い出の写真が詰まっていて、オーストラリアに来てからも日本の友達と連絡を取り続けている私にとっての心の支えとなっていた。帰宅してホストファミリーに早く相談しようと思った。しかし、誰も帰ってきておらず固定電話もない家だったので連絡できない状況だった。

 

今自分には何ができるのかを冷静に考え、となりに住むおばさんに事情を説明し、「電話を貸してほしい」とお願いした。笑顔で了承してくれて、「大丈夫?」と声を掛けてくれ心配してくれた。

 

引率の先生に「帰宅途中のバスでアイフォンを紛失しました」と伝えた。携帯にはスニーカーが描かれているカバーを付いていることや、ホストマザーがまだ帰宅していないことを説明した。先生は「すぐにバス会社とホストファミリーに連絡を入れます」と言ってくれた。

 

次の日、学校で先生に「大変だったわね。でもいい知らせがあるよ!さっきバス会社から連絡があって似たようなアイフォンが見つかったらしいよ」と知らせを聞かされ、ほっとした。

 

授業後すぐにバス会社に向かい、受付の女性に事情を説明した。すると、透明の袋に入れられたアイフォンを出してくれ、スクリーン画面の汚れを丁寧に拭いてくれた。「乗客がシートとの隙間にアイフォンが挟まっているのを見つけてくれて、運転手に手渡してくれたそうよ」と見つかった経緯を教えてくれた。拾ってくれた人の顔も名前も知ることはできなかったが、感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。

 

この経験を通じて、報告・連絡・相談の重要性を実感した。一人で抱え込んでいたら、ケータイの発見が遅れていたかもしれない。春から社会人になる自分に「ミスを恥ずかしがらずに、事が大きくなる前に報告・連絡・相談をしよう」と言い聞かせたい。この教訓を胸に、新社会人として一歩を踏み出していこうと思う。

【第1稿】

大学一年次の夏、語学研修でオーストラリアに一カ月間行った。これが、私にとって人生初の海外滞在である。初めて異文化を肌で感じ、日々新たなことを吸収し成長を感じることができた一ケ月だった。その期間中に、新たな自分に出会えた出来事が一つある。それは、初海外にしてケータイを紛失したことだ。

 

オーストラリアにきて一週間が経ったある日、いつものように大学からホームステイ先までバスでケータイを触りながら帰っていた。ふと窓から景色を眺めると降りるべきバス停に停まっていることに気づいた。慌ててケータイをパーカーのポケットにしまい込み、飛び降りた。ぎりぎり間に合って降りることができたことに安心しつつ、ポケットに手を入れた時ケータイがないことに気づいた。

 

バスを追いかけようと後ろを見た時には、既に発車していて間に合わないと思った。とりあえず帰宅して、ホストファミリーに相談しようと急いで帰ったがまだ誰も帰ってきておらず固定電話もない家だったので連絡したくてもできない状況だった。頭が真っ白の状態ではあったが、今の状況で自分には何ができるのかを冷静に考えた。ホストファミリーの向かいの家に住むおばさんに事情を説明して連絡を取ってもらおうと思いついた。そのおばさんとは、会うと必ず声を掛けてくれていて顔見知りだったこともあり、快く電話を貸して頂けた。そのおかげで、引率の先生とホストファミリーにすぐに事情を伝えることができた。

 

ケータイを紛失したその日のうちにバス会社にも事情が伝わったこともあり、無事に見つかった。

 

この経験を通して、緊急時に冷静に判断し行動することができるという自分の新たな一面に気づくことができた。また、日本にいるときも幾度となく「報告・連絡・相談が大事だ」と学んできたが、そのことを直に感じた。ケータイ紛失という失敗から学び、考える濃い一日となった。

【第1稿への講評】

 あなたが文章化しようとしている体験が認識されているのはよいと思います。ただし、すべて<地の文>なので場面が見えず、あなたの体験が読者には伝わりません。<地の文>というのは< 文章や語り物などで、会話以外の説明や叙述の 部分をいう。(大辞林)>です。
 この出来事について、会話に出来る部分を会話にし、場面が見えるようにしましょう。

※第1稿は、体験の再現ではなく、体験の概括的な説明になっていた。それが<すべて地の文>という指摘である。修正は、体験の中身を丁寧に再現する作業になったが、しっかりと書き込むことによって、バスで携帯を紛失し、それが戻ってきたという体験が、読者にも見える形で文章化された。

 発信力を高める文章講座


1.情報発信者を養成する文章講座の取り組み(川上泰徳)
2.学生の作品
 2-1.言葉のないコミュニケーションから学んだこと
 2-2.諦めないこと
 2-3.「伝える」コミュニケーション
 2-4.オーストラリアでの失敗から得た教訓
 2-5.弟の職業体験から考える賃金格差
 2-6.私が感じた情報格差
 2-7.楽しい世界の造り方
 2-8.「二度の受験を乗り越えて」
 2-9.傷ついて知ったこと
 2-10.旅から学んだこと
 2-11.ホストマザーとのコミュニケーション
 2-12.セックスワーカーの女性たち
 2-13.取材を通して学んだこと
 2-14.日本とインドネシアの架け橋
 2-15.「コミュニケーションが与えるもの」
 2-16.百崎先生との大学受験
 2-17.国境を越えるコスプレ文化との出会い
3.参加者の声
4.取り組みの狙い(佐藤都喜子学科長)