スーパーアドバンストPBLプログラム『PBL Literacy』
常に挑戦する「オンサイト」型の国際教養教育
ジャーナリストとのコラボレーションによる「リテラシー」能力の開発

発信力を高める文章講座

2.学生の作品


現代国際学部 国際教養学科 吉岡 優菜

ホストマザーとのコミュニケーション 【第10稿】

今年の夏、タイ研修に参加し、チェンマイのはずれにある村で二泊三日のホームステイを行った。「サワディーカー(こんにちは)」と手を合わせてホストマザーに挨拶すると、「サワディーカー」と笑顔で返してくれた。英語で「ハロー」と話しかけても、何やらタイ語で応える。英語が通じなかったようだ。
 ホストマザーは四十歳くらい。落ち着いた色の半袖とズボンをはいていて、素敵な笑顔の持ち主だ。そんな彼女の黒に近い茶色一色の木造平家には、イモリが住み着いていたり、電化製品はあってもテレビは中古のアナログテレビで質素な様子。彼女はスマートフォンを取り出して、翻訳機能で私たちと会話をしようとしたが、おかしな日本語に翻訳され、理解に苦労した。
昼になり、テーブルには炒飯と卵焼きが置いてあった。ホストマザーは食べてと料理を指して、スプーンですくうようにして示したので、私たちは椅子に座った。炒飯のふたを開けると海老や野菜が入っていて香ばしい匂いがして、湯気が立った。私たちは料理を取り分け、食べていると突然、彼女は翻訳機能を使わないで片方の親指を立ててグッドのポーズで「アロイ」と言った。
私は「アロイ」って何だろうと考えていると、彼女はまた同様にグッドのポーズで「アロイ」と言った。私は「アロイ」の意味が分からなかったが、ポーズも真似して言うと、彼女は嬉しそうな表情だった。そこでグッドのポーズと彼女の笑顔から「アロイ」は「美味しい」という意味だと分かり、次は笑顔で「アロイ」と答えた。この単語一つで、彼女と通じ合えたような喜びを感じた。
 二日目の昼は、外にある台所で一緒に巻き寿司のようなものを作った。壁側に流し台やコンロ、調理台は反対側にあり、常に虫が飛んでいた。そこで、彼女はご飯にチキンと卵、真っ赤な辛そうな調味料を少しつけて、葉っぱで巻くまで一通り教えてくれた。やってみてというように私たちに葉っぱを渡して調理場を開けてくれた。米はもち米に近く、調味料は他の具材やご飯に合っていた。
私は昨日学んだ「アロイ」を思い出し、「アロイ」と伝えると、彼女は「アロイマーク」と言った。最初は「マーク」が聞き取れず、「アロイ」と疑問形で尋ねると、何回か発音してくれた。私がようやく聞き取って、発音すると彼女は手を挙げて喜び、もっと食べてと葉っぱを一枚渡してくれた。私は、また「アロイマーク」は「とても美味しい」という言葉を覚えた。彼女は私のとても美味しいということを表情で理解してくれたのだと分かり、また喜びを感じた。
 ホストマザーに「ハロー」と話しかけても、タイ語で応えてきて、しばらく会話することはなかった。お昼の時、彼女から話しかけてくれ、私はなかなか意味を理解できずにいたが、理解するまで向き合ってくれ、理解すると一緒になって喜んでくれた。私は彼女の優しさと温かさを感じ、言葉は通じなくても楽しさや心地よさを感じた。コミュニケーションを図る上で相手を知るために、相手を思いやり、和やかな雰囲気作りが大切だと思った。

【第1稿】

私は、この夏タイ研修に参加した。この研修の中で、チェンマイにある小さな村でホームステイを二泊三日行った。私は大学の講義では得られない現場力や判断力を身に付けられると期待していた。しかし、ホームステイ当日まで、村の情報が全くなかったので、どのようなところで過ごすのか不安だった。
 まず、寺院で村人とホストファミリーに出会い、家まで連れて行ってくれた。しばらく次の活動まで時間があったので、ホストマザーに英語で話しかけてみた。私が自己紹介をすると、彼女はタイ語で答えた。私は、戸惑ったような表情だったのか、彼女はすぐに自分のスマートフォンを取り出し、翻訳機能で会話を始めた。私の自己紹介は通じていなかったようだが、彼女は「暑くないか」、「次の集合は何時か」など気遣って尋ねてくれた。
次に、昼食で炒飯と卵焼きをいただいた。彼女は食べずに翻訳機能を使って話しかけてくれたが、おかしな日本語に翻訳されることが多く、理解に苦労した。しかし、途中で彼女は翻訳機能を使わず、グッドのポーズで「アロイ」と尋ねた。私が真似して言うと、彼女は嬉しそうな表情だった。そこで「アロイ」は「美味しい」という意味だと理解し、また「アロイ」と笑顔で答えた。この単語一つで、彼女と通じ合えたような喜びを感じた。
 また、私たちが食事の前後に手を合わせて「いただきます」、「ごちそうさまでした」と言うと、興味深そうに真似してくれた。この時、ホストファミリーが私たちの習慣を知ろうと、受け入れようとする姿勢を感じた。私たちが積極的に葉っぱで皿や飾りを一緒に作っている時、彼らはいつも笑顔だったので、嬉しかったはずだ。まるで本当の家族の一員として受け入れてくれたような温かさと優しさを感じた。
 村でのホームステイを体験し、たとえ言葉で会話できなくても身ぶりや活動を通して、お互い通じ合うことができると学んだ。普段、言葉で会話することが当たり前だが、昼食時のように相手の言語を少しでも習得していく努力の大切さを知った。また、表情や体を使って伝え合うことは難しいだけでなく、通じ合えた時の喜びは普段味わえないものだ。コミュニケーションは必ずしも言語だけでなく、言語は一つのツールでしかないと考えた。

【第1稿への講評】

タイで「心に残った体験」が十分に分かっていることは評価できます。しかし、あなたには分かっていても、それが文章となって、読者に伝わっているかというと、それは伝わっていません。
第1段落の<私は大学の講義では得られない現場力や判断力を身に付けられると期待していた。しかし、ホームステイ当日まで、村の情報が全くなかったので、どのようなところで過ごすのか不安だった。>は、体験とは直接関係ない補足説明です。あくまで「心に残った体験」を中心に書き、「必要な説明」はその後でつけるように。
 ホストファミリーのところに二泊するということですが、タイの村の家がどんな家なのかは描写的に書く必要がありますね。あなたの記憶には残っているでしょうが、読者には分かりません。
 ホストマザーって、何歳くらいの人ですか。どんな感じの人ですか。どんな服装をしているのですか。あなたは英語でなんと話しかけたんですか。もちろん英語そのままではなく、日本語に直して、最初の場面を再現してみましょう。
 <以下省略>

※タイ研修でのホストファミリーとの交流を描いていて、それも昼食でのやりとりを書いている。「アロイ(おいしい)」という言葉が伝わった時のエピソードを書いたが、単に言葉だけの問題ではなく、昼食を準備するホストマザーの行動や筆者が手伝ったこと、さらに料理の描写などを具体的に記述することで、「おいしい」という言葉が実体を持ち、文章をよんだ読者にも「おいしい」が実感できるように修正を指導した。

 発信力を高める文章講座


1.情報発信者を養成する文章講座の取り組み(川上泰徳)
2.学生の作品
 2-1.言葉のないコミュニケーションから学んだこと
 2-2.諦めないこと
 2-3.「伝える」コミュニケーション
 2-4.オーストラリアでの失敗から得た教訓
 2-5.弟の職業体験から考える賃金格差
 2-6.私が感じた情報格差
 2-7.楽しい世界の造り方
 2-8.「二度の受験を乗り越えて」
 2-9.傷ついて知ったこと
 2-10.旅から学んだこと
 2-11.ホストマザーとのコミュニケーション
 2-12.セックスワーカーの女性たち
 2-13.取材を通して学んだこと
 2-14.日本とインドネシアの架け橋
 2-15.「コミュニケーションが与えるもの」
 2-16.百崎先生との大学受験
 2-17.国境を越えるコスプレ文化との出会い
3.参加者の声
4.取り組みの狙い(佐藤都喜子学科長)